銀行はここを見ている!実額で理解する財務の本質と経営改善

目次
はじめに
企業経営において「財務分析は比率で見るもの」という考え方が一般的だ。
流動比率、自己資本比率、売上高利益率など、さまざまな財務指標が活用されるが、本当にそれだけで経営判断を下してよいのだろうか。
特に中小企業では、比率分析が必ずしも適切な判断をもたらすとは限らない。
なぜなら、中小企業の財務には次のような特徴があるからだ。
- 決算書の精度が低く、数値の信頼性に疑問がある
- 売上や利益が小さいため、ちょっとした変動で比率が大きく変わる
- 比率では「実際にお金が残っているか」が分からない
そのため、比率だけを見ていると、黒字なのに資金繰りが苦しくなる「黒字倒産」や、粉飾決算に気づかないといった重大なリスクが発生する。
本記事では、比率分析の限界を指摘し、中小企業経営において本当に重要な「実額分析」について解説する。
具体的な事例を交えながら、資金繰りの改善や経営の健全化につなげる方法を詳しく説明するので、自社の経営を見直す参考にしてほしい。
比率分析と実額分析の違いとは?
企業の財務状況を分析する方法には、大きく分けて「比率分析」と「実額分析」があります。
多くの経営者や財務担当者が「財務分析=比率分析」と考えがちですが、実は比率分析だけでは企業の本当の実力を見誤ることがあります。
比率分析とは?
比率分析は、財務諸表の各項目をパーセンテージや比率で表し、企業の経営状態を判断する方法です。
たとえば、以下のような指標があります。
| 指標名 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 100%以上なら短期的な支払い能力がある |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 × 100 | 企業の安全性を示す(高いほど良い) |
| 売上高利益率 | 純利益 ÷ 売上高 × 100 | 売上のうちどれだけが利益になったか |
比率分析のメリットは、異なる規模の企業でも財務状況を比較しやすい点です。
しかし、中小企業にはこの比率分析があまり向かないケースがあります。
実額分析とは?
実額分析は、財務諸表の数値をそのまま確認し、企業の資金の流れや負債の大きさを具体的に把握する方法です。
たとえば、「会社の口座に実際にいくら残っているのか」「借入金の元本返済額はいくらか」といった情報が重要になります。
【例】比率分析 vs 実額分析
✅ 比率分析:「当社の流動比率は150%だから安心だ」
❌ 実額分析:「流動資産の大半が売掛金で、現金はほとんどない!」
このように、比率だけでは「企業の真の姿」が見えないことが多いのです。
なぜ中小企業には比率分析が向かないのか?
比率分析は大企業の財務管理には有効ですが、中小企業ではむしろ誤った判断を招くことがあります。
その理由を詳しく解説します。
1. 中小企業の決算書は精度が低い
中小企業の決算書には、大企業のような厳格なルールや監査が入らないことが多く、粉飾や曖昧な処理が行われることがあります。
特に、以下のようなケースがよくあります。
- 経費を意図的に調整
節税対策のために、役員報酬や交際費を意図的に増減させる。
その結果、損益計算書の利益が実態と異なることがある。 - 売掛金や在庫の過大計上
実際には回収が難しい売掛金や、売れる見込みのない在庫が資産として計上されることがある。
これにより、資産規模が実態よりも大きく見えてしまう。
比率分析は「正しい決算書」が前提となるため、データが曖昧な中小企業では信頼性が低くなる。
2. 規模が小さいため、比率が極端に変動しやすい
中小企業は、大企業に比べて売上や利益の絶対額が小さいため、ちょっとした変動でも比率が大きく変わる。
その結果、次のような問題が起こる。
【例】売上が前年より少し減った場合
- 大企業の場合
売上 100億円 → 98億円(2%減)
大きな影響なし - 中小企業の場合
売上 1億円 → 9,000万円(10%減)
売上高利益率や自己資本比率が大きく変動し、銀行の評価が急落する可能性がある。
このように、中小企業では比率が安定せず、数値の信頼性が低い。
3. 比率では「実際にお金が残っているか」が分からない
比率分析は、「企業が黒字か赤字か」を判断するのには役立つが、実際に資金繰りが回っているかどうかは分からない。
特に中小企業では、以下のような状況がよくある。
- 「黒字倒産」が起こりやすい
損益計算書では利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、借入金の返済が重なったりして資金繰りが悪化し、倒産するケースがある。 - 比率では「支払い能力」が見えにくい
例えば「流動比率」が200%だったとしても、流動資産の大部分が売掛金であれば、手元資金が不足する可能性がある。
そのため、資金繰りや実際のキャッシュフローを重視する「実額分析」の方が適している。
実額で見るべき財務のポイント
比率分析では企業の実態を正確に把握できないため、中小企業では「実額ベース」で財務を見ることが重要になる。
ここでは、経営者が押さえておくべき「実額で確認すべき財務のポイント」を解説する。
1. 「今すぐ使えるお金」がいくらあるか?
企業が経営を続けるために最も重要なのは「現金」だ。
決算書では「流動資産」として現金や預金、売掛金などが計上されるが、「実際に使えるお金」がどれだけあるかを確認する必要がある。
チェックすべきポイント
- 銀行口座の残高 … すぐに引き出せる現金はいくらか?
- 手形や売掛金の回収見込み … いつ、どれだけ回収できるのか?
- 担保に入っている預金 … 実際に引き出せないお金が含まれていないか?
2. 借入金の返済スケジュール
利益が出ていても、借入金の返済が多ければ資金繰りは厳しくなる。
「月々の返済額が売上や利益と比べて適切か?」を必ず確認すべき。
チェックすべきポイント
- 毎月の元本返済額 … 返済負担が重すぎないか?
- 金利負担 … 長期借入と短期借入のバランスは適正か?
- 繰り上げ返済の余力 … 余裕資金があれば負担軽減のために繰り上げ返済を検討できるか?
3. 仕入れ・支払いの実額を把握する
多くの企業は、取引先への支払いサイト(支払期限)と、売掛金の回収サイトのズレにより、資金繰りが苦しくなる。
チェックすべきポイント
- 月々の仕入額と支払額のバランス … 仕入れに対して十分な売上・回収があるか?
- 売掛金の回収期間 … 取引先からの入金が遅れていないか?
- 買掛金の支払い期間 … 仕入れ先への支払いが急すぎて資金繰りを圧迫していないか?
4. 粉飾されやすい「資産」の実額を確認する
決算書上の「資産」の中には、実際には価値のないものが含まれていることがある。
特に、中小企業の財務では「架空の資産」が計上されていることがあるため、以下の点をチェックするべき。
チェックすべきポイント
- 売掛金が長期間回収されていないものがないか?
- 在庫が過大計上されていないか?(不良在庫が含まれていないか)
- 土地や設備が実際の市場価格とかけ離れていないか?
5. 経営者自身の資産と会社の資産の関係
中小企業では、経営者個人と会社の財務が混在していることが多い。
特に、経営者が会社の資金を私的に使っていると、財務状況が不透明になる。
チェックすべきポイント
- 社長個人の借入金が会社に影響を与えていないか?
- 経営者個人の支出が会社の経費として処理されていないか?
- 会社の資金を個人資産に流用していないか?
具体的な事例を交えた実額分析の方法
ここでは、実際の中小企業で起こりやすい財務の問題を取り上げ、それを実額ベースでどのように分析すればよいのかを解説する。
事例1:黒字なのにお金がない?「黒字倒産」の原因と解決策
状況
ある製造業の企業が、決算上は1,000万円の黒字を出していた。しかし、実際の銀行口座には100万円しかなく、支払いが滞りそうな状態になっていた。
比率分析の視点
- 売上高利益率 は10%で健全
- 自己資本比率 は30%で問題なし
- 流動比率 も150%あり、財務的に安定しているように見える
実額分析の視点
- 銀行口座残高:100万円しかない
- 売掛金残高:2,000万円(回収予定は3か月後)
- 借入金返済額:毎月500万円
- 買掛金の支払期日:翌月末に800万円の支払いが必要
問題点と解決策
問題点:
- 売掛金の回収が遅く、資金繰りに支障が出ている
- 借入金返済と買掛金の支払いが重なり、手元資金が足りない
解決策:
- 売掛金の回収を早める交渉をする(早期回収割引を提案)
- 買掛金の支払いを交渉し、支払いサイトを延ばす
- 借入金のリスケジュール(返済計画の見直し)を金融機関と交渉
- 短期の資金繰りをカバーするために「短期借入」を検討
事例2:在庫が多すぎると会社が傾く?「過剰在庫」の落とし穴
状況
ある小売業の会社では、売上が伸びているのに利益がほとんど出ず、資金繰りも悪化していた。
比率分析の視点
- 棚卸資産回転率 は2.0回で業界平均
- 売上総利益率 も30%と問題なし
- 流動比率 は120%で安定
実額分析の視点
- 在庫金額:5,000万円(過去最高水準)
- 売上:年間1億円(1か月平均約830万円)
- 在庫のうち3,000万円分が「半年以上売れていない商品」
- 仕入れの支払期日:毎月800万円
問題点と解決策
問題点:
- 不良在庫が増え、資金が回収できていない
- 在庫が売れないため、仕入れの支払いが負担になっている
解決策:
- 不良在庫の一掃セールを実施し、現金化する
- 今後の仕入れ量を見直し、売れ行きに応じた発注に変更
- 仕入れ先との交渉で、仕入れ条件(支払サイト)を長くする
- 新商品投入の際にテスト販売を行い、在庫リスクを減らす
事例3:経営者の個人支出が会社を圧迫する「経営と私財の混同」
状況
ある建設業の会社では、業績が好調なはずなのに、資金繰りが常に厳しく、融資を受けてもすぐに資金がなくなる状態だった。
比率分析の視点
- 営業利益率 は15%で健全
- 自己資本比率 も25%あり、特に問題なし
実額分析の視点
- 社長個人のクレジットカードの支払いが会社経費に含まれていた(年間500万円)
- 社長名義の高級車(リース費用毎月30万円)も会社負担
- 会社の利益の一部を個人資産(不動産購入)に流用していた
- 本来の経費を計上せず、粉飾決算気味になっていた
問題点と解決策
問題点:
- 会社の資金が経営者の私的利用に使われ、資金不足を引き起こしている
- 経費の水増しによる粉飾が発生している可能性がある
解決策:
- 経営者の個人支出と会社経費を明確に分ける(法人カードの利用徹底)
- 会社名義の高額な支出を見直し、本当に必要な経費に限定する
- 税理士と相談し、適切な役員報酬の設定を行う
- 金融機関との信頼を損なわないよう、決算書を健全化する
まとめ
実額分析の重要性は、財務の「見た目」ではなく「本当の状況」を把握することにある。
比率分析では気づけない「資金の流れ」や「具体的な問題点」を明確にし、適切な対応策を講じることができる。
実額分析を活用して会社を強くする方法
実額分析を取り入れることで、会社の実態を正しく把握し、経営判断の精度を高めることができる。
ここでは、実額分析を活用して会社を強くするための具体的な方法を解説する。
1. キャッシュフローを重視した経営にシフトする
会社を健全に成長させるには、利益以上に「現金(キャッシュ)」の流れを重視することが重要だ。
実践方法
- 毎月の「キャッシュフロー計算書」を作成し、資金の流れを可視化する
- 売掛金の回収を早め、買掛金の支払いを適正化する(回収サイトと支払サイトのバランスを取る)
- 短期借入金と長期借入金の返済計画を見直し、無理のない資金繰りを確立する
効果
- 会社の実態を正確に把握できるため、突然の資金ショートを防げる
- 利益が出ているのに資金が足りなくなる「黒字倒産」のリスクを軽減できる
2. 財務の「見える化」を進め、経営の意思決定を迅速化する
実額分析を活用することで、経営者が直感ではなくデータに基づいた意思決定をできるようになる。
実践方法
- 「現金残高」「売掛金の回収状況」「在庫の実態」「借入金の返済予定」など、重要な財務データを一覧化する
- 週次・月次で財務状況をチェックし、異常があれば即対応する
- 財務データを社内で共有し、幹部社員も財務を理解できるようにする
効果
- 財務状況の変化に素早く対応できる
- 経営の「勘」に頼らず、データに基づいた意思決定が可能になる
3. 無駄な支出を削減し、利益率を向上させる
実額分析をすると、意外と「無駄な支出」が見えてくることが多い。
利益率を上げるには、売上を増やすだけでなく、コストを適正化することも重要だ。
実践方法
- 毎月の支出を項目ごとに分析し、「削減できる費用」と「必要な投資」を区別する
- 過剰な広告費、不要な接待交際費、使っていないサブスクリプションなどを見直す
- 在庫の適正化を行い、無駄な仕入れを減らす
効果
- 無駄なコストをカットし、利益率が向上する
- 適正な経費管理ができるようになり、健全な経営体質を築ける
4. 銀行や投資家からの信用を高め、資金調達力を強化する
財務の健全性を高めることで、銀行や投資家からの信用を得やすくなり、資金調達がしやすくなる。
実践方法
- 実額ベースで「資金繰り表」「借入返済計画」「売掛金回収計画」を作成し、銀行に提出できるようにする
- 決算書を粉飾せず、実態に即した財務管理を行う
- 利益の安定性を示し、銀行からの融資条件を有利にする
効果
- 低金利での融資が受けやすくなる
- 金融機関との信頼関係が築け、緊急時の資金調達がスムーズになる
5. 事業計画と財務戦略を連携させ、成長を加速させる
実額分析を経営戦略とリンクさせることで、事業の成長スピードを加速させることができる。
実践方法
- 「今後3年間の事業計画」と「財務戦略(資金繰り、投資計画)」を連携させる
- 設備投資を行う際は、投資回収までの期間とキャッシュフローを慎重に分析する
- 事業拡大のタイミングを見極め、無理のない成長戦略を描く
効果
- 短期的な利益だけでなく、長期的な成長を実現できる
- 事業拡大時の資金ショートを防ぎ、安定した成長を続けられる
まとめ
中小企業において、比率分析よりも実額分析を重視することで、以下のようなメリットが得られる。
- 資金繰りのリスクを最小化し、黒字倒産を防ぐ
- 経営の透明性を高め、意思決定を迅速化する
- 無駄な支出を削減し、利益率を向上させる
- 銀行や投資家からの信用を高め、資金調達を有利にする
- 事業計画と財務戦略を連携させ、持続的な成長を実現する
これからの経営では、「比率の数字」よりも「実際のお金の流れ」に注目し、現実的な経営判断を行うことが求められる。
おわりに
中小企業の財務分析では、比率分析に頼りすぎると経営の実態を見誤ることがある。
比率が良好でも資金繰りが厳しくなれば、黒字倒産の危機に直面することも珍しくない。
そのため、経営者は「利益が出ているか」よりも「実際にお金が残っているか」に注目するべきだ。
実額分析を活用することで、次のようなメリットが得られる。
- 資金繰りの悪化を未然に防ぎ、黒字倒産を回避できる
- 財務の透明性が向上し、経営判断の精度が高まる
- 無駄な支出を削減し、利益率を向上させられる
- 銀行や投資家の信頼を得て、資金調達力を強化できる
財務の健全化は、単なる数字の改善ではなく、経営の安定と成長の土台となる。
自社の財務を「実額」でしっかりと把握し、強い経営基盤を築いていこう。

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