中小企業が成長するための経営計画書5つの鉄則

目次
はじめに
経営計画書——その言葉を聞くだけで、あなたはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
「銀行に見せるための厚い資料」「コンサルタントが作らせる形式的な書類」「社内に配布しても誰も読まない紙束」……。
多くの経営者がこうした印象を抱いています。実際、立派に作られた計画書が机の引き出しに眠り、誰の行動も変えられないまま終わっているケースは少なくありません。
しかし一方で、経営計画書を上手に使い、社員を変え、取引先を動かし、銀行に信頼され、業績を大きく伸ばしている会社もあります。
両者の違いはどこにあるのでしょうか。
答えはシンプルです。
**「見栄えの良い計画書を作るか」「実行できる計画書を作るか」**の差にすぎません。
経営計画書は「立派な書類」をつくるためのものではありません。
会社を変えるための「道具」であり、社員の心を動かす「魔法の書」なのです。
本記事では、数多くの経営計画書と企業の実践を分析して見えてきた、成功するための原理原則を紹介します。
- 立派すぎる計画書がなぜ危険なのか
- 経営理念を「無理に作ってはいけない」理由
- プロジェクト計画書がもたらす実行力
- 社長から社員・取引先に送る手紙の魔法
- 成功する計画書に共通する原理原則
これらを理解すれば、あなたの会社の経営計画書は「読まれるだけの書類」から「会社を動かす力強い設計図」へと生まれ変わります。
ぜひ最後まで読み進め、明日からの経営に取り入れてください。
立派すぎる経営計画書が危険な理由
経営者の中には「経営計画書は立派であればあるほど良い」と信じている人が少なくありません。毎年分厚いファイルを社員に配布し、壮大なビジョンや細かい施策を盛り込む。外部コンサルタントからも「よくできている」と褒められる。
しかし——実際の現場では、それが「毒」となるケースが後を絶ちません。
なぜなら、立派すぎる計画書は「実行不可能」な内容を抱えてしまうからです。どれほど美しい言葉で飾られていても、実務に落とし込めなければ意味がありません。むしろ、社長自身や社員の信頼感を奪い、組織を混乱させる危険すらあるのです。
ここでは、経営計画書を「立派さ」より「実行性」に重きを置くべき理由を、実例を交えながら解説していきます。
1. なぜ「立派すぎる計画書」が生まれるのか?
経営計画書を初めて作るとき、多くの社長は他社の事例集や先輩経営者の資料を参考にします。これは自然なことです。最初は「真似」から始める方が良い。基礎を学ぶ上で効率的です。
ところが、作成経験が数年を超えると、「自分の色を出さねば」と意識し始めます。結果として、理念・ビジョン・戦略・戦術を盛り込みすぎ、気がつけば数万字に膨れ上がった「百科事典」のような計画書が出来上がってしまう。
一見、網羅的で立派ですが、実はこれが罠です。
なぜなら「網羅」と「実行」はまったく別物だからです。
2. 総花主義の計画は「無方針」と同じ
計画書に「やるべきこと」を10も20も並べてしまうと、結局はどれも中途半端になります。社員にとっては「結局どこに集中すればいいのか分からない」という状態に陥り、行動の優先順位が曖昧になります。
その結果、以下のような問題が生じます:
- 社員:「そんなに同時にできるわけがない」と最初から実行意欲を失う
- 社長:実行不十分な部分を見ても「仕方ない」と目をつぶってしまう
- 組織:本気でやるという緊張感が消え、惰性で進む
これはまさに「総花主義(そうばなしゅぎ)」の失敗です。
あれもこれも手をつけた結果、何も達成できない。つまり「無方針」と同じことなのです。
3. 社員の「社長不信」を招く恐ろしい副作用
さらに深刻なのは「社員の信頼を失うこと」です。
経営計画は「社長の意思表明」です。その内容が大きく、盛りだくさんであればあるほど、社員は「これは本気でやるんだな」と最初は思います。
しかし実際には、あまりに多すぎて実行されない。あるいは中途半端で終わる。社長自身もそれをチェックできない。
このとき社員は次のように感じます:
- 「社長は本気じゃない」
- 「口だけでやらない人なんだ」
- 「どうせまた途中で終わるんでしょ」
こうなれば、経営計画どころか「社長そのものへの信頼」が揺らぎます。
そして、信頼を失った組織は一気に士気が低下し、数字以前に文化そのものが崩れていきます。
4. 「一点突破」が企業を変える
では、どうすればよいのでしょうか?
答えはシンプルです。
計画期間中に取り組むことを、3つ以内に絞る。
可能なら「1つ」でも構いません。
実際に、ある製造業の会社は1年間の経営方針を「工場内の環境整備」だけに設定しました。掃除・整理整頓・標識の整備・安全管理。徹底してこの一点だけを追求しました。
その結果、工場が見違えるほど清潔になり、作業効率は向上。社員の意識も変わり、顧客からも「安心して任せられる会社」という評価を得て、売上が大幅に伸びました。
このように「やることを絞る」ことで、組織全体が集中し、成果が明確に表れます。
5. 実行できる経営計画の作り方
では具体的に、実行可能な計画書にするためにはどうすればいいのか?
以下のステップが効果的です。
| ステップ | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 基本方針を確認する | 長期的に変わらない理念・使命を確認する | 「会社は何のために存在するのか」を忘れない |
| ② 年間でやることを3つ以内に絞る | できれば1つ | 社員が「本気でやれば達成できる」と思えるレベル |
| ③ 実行の基準を数値化する | 「掃除を徹底」ではなく「1日10分全員で掃除」 | 行動レベルに落とし込む |
| ④ 定期チェックを仕組みに組み込む | 月次・四半期で振り返る | チェックがなければ「机上の空論」になる |
| ⑤ 社長が最も本気になる | 社員は社長の本気度を敏感に察知する | 「やる」と決めたら最後までやり抜く覚悟 |
6. 「立派な会社」を作ることが目的
ここで最も大切なことを改めて強調します。
経営計画書は「立派な計画書」を作ることが目的ではありません。
目的は「立派な会社をつくること」です。
計画書はそのための「道具」にすぎません。
どれだけ綺麗な言葉を並べても、それが実行されなければ意味がない。むしろ害になる。だからこそ、社長は「道具に振り回されない」意識を常に持たなければならないのです。
まとめ:社長に問いたい3つの質問
最後に、この記事を読んでいるあなたに3つの質問を投げかけます。
- あなたの経営計画書は、社員が実行できる内容になっていますか?
- 取り組むテーマを3つ以内に絞り込んでいますか?
- そして、社長自身が「本気でやり抜く覚悟」を示せていますか?
この3つの問いに「はい」と答えられるなら、あなたの会社は必ず成果を出せます。
逆に「いいえ」が混じるなら、今こそ計画書を見直す時です。
経営理念を「無理に作るな」という本当の意味
多くの経営セミナーやビジネス書では「まず経営理念を作りましょう」と強調されます。
「理念なき経営は漂流する船のようなものだ」——確かにそれは事実です。
しかし、現場で数多くの経営計画書を見てきた私が感じるのは、**「経営理念を無理に作ろうとする危険」**です。
理念とは、単なる言葉の集合体ではなく、経営者自身の血と汗と涙の積み重ねから生まれる「魂の叫び」のようなものです。短時間で頭からひねり出すようなものではありません。
この記事では、なぜ経営理念を「無理に作ってはいけないのか」、そして「理念が自然に形を持つ瞬間」とは何かを掘り下げていきます。
1. 経営理念は「悟り」に近い
経営理念を簡単に言葉にできる人もいます。しかし、その多くは「借り物の言葉」にすぎません。美辞麗句で整えられた文章は、一見立派ですが、実行の現場で社員の心に響かないことが多いのです。
理念とは、ある意味で「悟り」に近いものです。
- 数年、数十年の経営の試行錯誤
- 顧客からの厳しい叱責
- 失敗の連続、再起の苦労
- 哀しみや感謝を通して芽生える使命感
こうした体験の積み重ねが、ある時ふと形を成す。
それが本物の「経営理念」です。
2. 無理やり作った理念の弊害
「理念がないと恥ずかしい」と感じる経営者は多いです。そこでセミナー後やコンサル指導の直後に、慌てて「理念」を作り上げるケースがあります。
しかし、これは危険です。
主な弊害
- 言葉と行動の乖離
→ 社員は社長の日々の行動を見ています。「お客様第一」と掲げながら、実際には取引先に横柄な態度を取れば、理念は一瞬で空文化します。 - 社員の冷笑
→ 社員は「また立派なことを言っているけど、どうせ実行しない」と受け止めます。理念どころか社長自身の信用を失います。 - 計画書の信頼性低下
→ 経営計画書に理念が形だけ載っていると、他の部分も「どうせ形式だけだろう」と見なされます。
つまり、理念を「作ること自体」が目的になった瞬間、それは逆効果になるのです。
3. 経営理念は「湧き上がるもの」
本物の経営理念は「無理に作るものではない」。
むしろ、事業の歩みの中で自然に湧き上がってくるものです。
例えば:
- 倒産の危機を救ってくれたお客様に「絶対に裏切らない」と誓った瞬間
- 長年働いてくれた社員が退職するときに「社員の人生を背負っている」と実感した瞬間
- 製品事故で顧客に迷惑をかけ、心から謝罪したときに「安全第一」を心に刻んだ瞬間
こうした「止むに止まれぬ魂の叫び」が理念になるのです。
だからこそ、時間がかかっても構いません。
場合によっては、一生かかっても明確な理念に言葉を与えられない経営者もいるでしょう。
それでも、日々の意思決定に「お客様のため」「社員のため」という信念があれば、それ自体が“表現されない理念”なのです。
4. 経営理念は「言葉」より「行動」で示す
社員は経営者の背中を見ています。
立派な理念を掲げるより、日々の行動が理念そのものです。
例えば:
- ゴミが落ちていたら社長が率先して拾う → 「環境整備は大事」という理念
- 約束の納期を守るために自ら汗を流す → 「誠実さが最優先」という理念
- 苦しい時でも社員の給料を守る → 「社員第一主義」という理念
つまり、理念は「書かれた言葉」よりも「積み重ねられた行動」によって、社員や顧客に伝わります。
5. 「理念がない」ことは恥ではない
ここで強調したいのは、「理念がまだ形になっていない」ことを恥じる必要はないということです。
むしろ、理念がないのに無理やり美辞麗句を掲げる方がよほど有害です。
経営理念は、社長の心の奥底に眠る「使命感」が形を取るまで待てばいい。
その間は、「私たちはお客様に喜んでもらうために仕事をしている」——そのシンプルな信念だけで十分なのです。
6. 本物の理念を育てるための3つの問い
理念を「探す」必要はありません。
ただ、自分の心の奥にあるものを「気づく」だけでいいのです。
以下の問いを、日々自問してみてください:
- 私は何のために経営をしているのか?
- どんなお客様に、どんな価値を届けたいのか?
- 社員やその家族に対して、私はどんな責任を持っているのか?
この問いを繰り返すうちに、やがてあなたの中から「理念」が自然に姿を現します。
まとめ:理念は「魂の言葉」でなければならない
経営理念は「無理に作るな」。
それは、理念が本来「経営者の魂から自然に湧き出るもの」だからです。
もしまだ形にならなくても大丈夫です。
大切なのは「お客様に価値を届ける」という信念を持ち、日々の行動にその信念を映し出すこと。
理念とは書類に載せる文章ではなく、社長の生き方そのものなのです。
プロジェクト計画書が持つ3つの力
経営計画書が「会社全体の方向性」を示す地図だとすれば、プロジェクト計画書は現場で使うナビゲーションシステムのようなものです。
つまり、経営計画を「実行」に落とし込むための具体的な道具です。
ここで重要なのは、プロジェクト計画書を作ること自体に大きな価値があるという点です。
単なる書類作成ではなく、経営者・社員・取引先を巻き込む力を持っているのです。
この記事では、プロジェクト計画書が持つ3つの力を実例を交えながら解説します。
1. 社長の方針が社員に正しく伝わる「翻訳機」の力
多くの経営者が頭を悩ませるのは、**「自分の考えが社員に正しく伝わらない」**という問題です。
社長は「環境整備を徹底せよ」と言っているのに、社員は「掃除の回数を増やせばいいんだな」と表面的にしか理解していない。
ここで役に立つのがプロジェクト計画書です。
社員に「具体的なプロジェクトとして計画書を書かせる」と、社長の意図をどう理解しているかが一目で分かります。
- 社長が「顧客満足度を高める」と言った場合
→ ある社員は「クレーム対応を迅速化する」と書く
→ 別の社員は「新商品の提案頻度を増やす」と書く
この時点で「理解のズレ」が明確になります。
社長は「私が意図しているのはここだ」と指摘でき、修正を加えることができます。
つまりプロジェクト計画書は、**社長の考えを社員に伝える「翻訳機」**として機能するのです。
2. 社員の「考える力」を鍛える「筋トレ」の力
プロジェクト計画書を作るには、次のようなことを考えざるを得ません。
- 目的(Why):なぜこのプロジェクトをやるのか?
- 内容(What):具体的に何をやるのか?
- 担当(Who):誰が責任を持つのか?
- 場所(Where):どの部署・どの現場で行うのか?
- 期限(When):いつまでに完了させるのか?
- 方法(How):どのように進めるのか?
これは、ビジネスの基本フレームワーク「5W1H」そのものです。
普段の業務で流されている社員にとって、こうした思考を整理して文章にするのは大変です。
しかし、この「大変さ」こそが社員を成長させます。
例えるなら、ジムで筋トレをするようなものです。
重たいバーベルを持ち上げることで筋肉がつくように、プロジェクト計画書を書くことで「思考力」「段取り力」「責任感」が鍛えられるのです。
3. 社内外の協力を引き出す「説得力」の力
意外に見落とされがちですが、プロジェクト計画書には周囲を巻き込む力があります。
たとえば、ある営業担当者が「新規顧客100社開拓」というプロジェクトを立てたとします。
ただ口頭で「協力してください」と言っても、他部署や取引先は動いてくれません。
しかし、計画書という形で「いつ・誰が・何を・どうやって」を明示すると、相手はこう感じます:
- 「ここまで具体的に考えているなら、断れないな」
- 「自分の役割も明確になっているから、協力しやすい」
実際、ある製造業の社長は取引先に協力をお願いする際、必ず簡単なプロジェクト計画書を持参しました。すると、相手は「そこまで準備しているなら協力しよう」と承諾してくれる確率が格段に上がったのです。
つまり、プロジェクト計画書には**「人を動かす説得力」**があります。これは口頭の依頼やメールでは絶対に得られない効果です。
4. プロジェクト計画書を作らない理由は「知らないだけ」
「必要なのは分かっているけど、うちの社員は計画なんて作れない」と言う社長がいます。
しかし、それは誤解です。
計画書が作れないのではなく、「どう作ればいいか知らない」だけです。
実際に、小学校卒業までしか教育を受けていない職人でも、プロジェクト計画書のフォーマットを与えたら立派に作り上げることができました。
要するに、型さえあれば誰でも作れるのです。
その型こそ「5W1Hを埋める」シンプルなフレームワーク。
- 目的は何か?(Why)
- 具体的に何をするのか?(What)
- 誰が責任者か?(Who)
- どこで実施するのか?(Where)
- 期限はいつか?(When)
- 方法はどうするのか?(How)
この項目を埋めるだけで、立派なプロジェクト計画書が出来上がります。
5. 「チェックなき計画は計画にあらず」
プロジェクト計画書を作っただけで満足する人がいますが、それは半分です。
真価を発揮するのは、定期的にチェックする仕組みを持ったときです。
チェックのポイントは:
- 誰がチェックするのか(上司・チームリーダー)
- いつチェックするのか(毎週・毎月)
- 何をチェックするのか(進捗・課題・改善点)
この仕組みがあると、プロジェクトは「走りっぱなし」で終わらず、軌道修正しながらゴールに近づいていけます。
逆に言えば、**チェックがない計画は「計画」ではなく「願望」**にすぎません。
6. プロジェクト計画書がもたらす経営効果
ここまでを整理すると、プロジェクト計画書が持つ力は次の3つに集約されます。
| 力 | 内容 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 翻訳機の力 | 社長の方針を社員に伝える | 意思疎通のズレがなくなる |
| 筋トレの力 | 社員の思考力を鍛える | 計画性・段取り力が高まる |
| 説得力の力 | 協力者を動かす | 社内外の協力が得やすい |
さらに加えるなら、**「組織に自律性を育てる」**効果もあります。
社員が自分で計画を立て、自分で進め、自分で成果を出す。
これは中小企業にとって最も強力な成長エンジンになります。
まとめ:プロジェクト計画書は「時間の節約装置」
最後に、経営者がよく誤解している点を正しておきましょう。
「計画書を作るのは時間がかかるから面倒だ」と言う人がいます。
しかし、実際には逆です。
プロジェクト計画書に1時間をかけることで、その後の実行段階で数十時間のロスを防げます。
つまり、プロジェクト計画書は「時間の節約装置」なのです。
経営の現場において、これほど投資効果の高いツールはありません。
社長から社員・取引先に伝える「手紙の魔法」
会社を変えるのは戦略や数字だけではありません。
時に、社長が書くたった一通の手紙が、社員や取引先、銀行までも動かし、組織を変革するきっかけになります。
手紙には「言葉以上の力」があります。
なぜなら、そこには社長の「時間」「心」「想い」が込められているからです。
ここでは、なぜ経営者の手紙が魔法のような力を発揮するのか、そしてどのように書けばよいのかを徹底解説します。
1. 手紙が「魔法の一枚」と呼ばれる理由
手紙の力を最も体感しているのは社員です。
経営計画発表会の後に、社長から一人ひとりに手紙が届くと、社員の態度は劇的に変わります。
- 「自分のことを見てくれている」
- 「社長は本気なんだ」
- 「この会社で頑張りたい」
社員の心が動くのは、数字でも戦略でもなく、「心を込めた言葉」なのです。
さらに、取引先や銀行も同じです。
社長から直接届く手紙は、FAXやメールよりも圧倒的に強い印象を残します。
つまり、手紙は経営において**「人の心を動かす最強のツール」**なのです。
2. 手紙が持つ3つの効果
手紙の効果は大きく分けて3つあります。
(1) 社員のモチベーションを高める
社員にとって、社長は遠い存在に見えがちです。
しかし、手紙で「よく頑張ってくれている」「君に期待している」と伝えられると、一気に距離が縮まります。
特に、入社間もない若手社員や、少し気持ちが離れかけている社員にとって、手紙は「私はここで必要とされている」という実感になります。
(2) 取引先との関係を深める
取引先に「日頃の感謝」を手紙で伝える社長は意外に少ないものです。
だからこそ、手紙をもらった相手は強い印象を受けます。
ある社長は、年末に主要な取引先へ直筆の感謝の手紙を送りました。すると翌年、ライバル会社ではなくその会社を優先して発注してくれるケースが増えました。
(3) 銀行との信頼を築く
銀行担当者にとっても、社長直筆の手紙は特別です。
「ご支援いただき感謝しています。来期はこのように改善します」という手紙を受け取った担当者は、「この社長は誠実だ」と感じます。結果、融資の交渉もスムーズに進むことが多いのです。
3. 手紙は「形式」ではなく「誠意」
ここで注意すべきなのは、「形式的な手紙」は逆効果になるということです。
- 定型文ばかり
- 美辞麗句のオンパレード
- 社員や取引先の名前をコピペ
これでは「本気じゃない」と見抜かれます。
手紙の力は「誠意」に比例します。
誠意ある手紙の特徴は次の通りです。
- 相手の名前をきちんと書く
- 具体的な出来事に触れる(「先日の展示会では…」など)
- 感謝や期待を素直に表現する
- 自分の言葉で書く(完璧でなくてよい)
4. 社員に響く「社長の手紙」の書き方
社員向けの手紙で大切なのは、**「認める」「感謝する」「期待する」**の3つです。
例えば:
- 「今年は新人教育をよく頑張ってくれたね」
- 「あなたのおかげでお客様から高い評価をいただけた」
- 「来年はさらにリーダーとして活躍してほしい」
これだけで社員は「社長は自分を見てくれている」と実感します。
さらに効果を高めるには、社員の家族宛に手紙を書くことです。
「ご家族の支えがあってこそ、〇〇さんは会社で活躍できています」と伝えれば、家族も会社への信頼を強め、社員は「家族に誇れる会社で働いている」と感じます。
5. 取引先や銀行に響く「社長の手紙」の書き方
取引先や銀行に出す手紙では、**「感謝」「誠実さ」「未来への意思」**が大切です。
例えば:
- 「長年にわたりご支援いただきありがとうございます」
- 「納期遅れでご迷惑をおかけしましたが、改善に全力を尽くします」
- 「来期は新商品開発に挑戦し、さらにご期待に応えたいと考えています」
銀行宛には特に「弱みを隠さず書く」ことが効果的です。
「資金繰りで厳しい局面がありますが、改善のためにこう取り組みます」と正直に書けば、銀行は「この社長は信頼できる」と判断します。
6. 手紙は「社長の最大の投資」
社長が手紙を書くのは、時間も手間もかかります。
しかし、その効果は数字以上に大きなものです。
- 社員の士気向上 → 生産性アップ
- 取引先の信頼強化 → 売上アップ
- 銀行の支援獲得 → 資金繰り安定
つまり、**手紙は「最小のコストで最大のリターンを生む投資」**なのです。
まとめ:手紙は「数字を超える経営戦略」
経営者はつい数字や戦略に意識を向けがちです。
しかし、会社を動かすのは「人の心」です。
その人の心を動かす最もシンプルで強力な手段が、社長からの手紙です。
数字を追う前に、まず一通の手紙を書いてみてください。
それが社員を動かし、取引先を動かし、銀行を動かし、やがて数字を動かすことになります。
成功する経営計画書に共通する原理原則
経営計画書を長年研究していると、業種も規模も異なる数多くの企業に、驚くほど共通する成功パターンがあることに気づきます。
それは単なる偶然ではなく、経営における「原理原則」が働いているからです。
ここでは、成功する経営計画書に共通する原理原則を整理し、どのように実務に落とし込めばよいのかを具体的に解説します。
1. 経営の原理原則は「変わらないもの」と「変わるもの」
経営には二つの側面があります。
- 変わらない原理原則
→ 顧客第一、誠実、継続的改善など、時代や業種を問わず普遍的に通用する考え方。 - 変わる事業展開
→ 製品構成、販売戦略、人材育成など、外部環境や自社の成長段階によって変化するもの。
成功する経営計画書は、この二つを明確に区別しています。
つまり、**「変わらない軸」と「変わる戦術」を切り分ける」**ことができているのです。
2. 成功する計画書に共通する「5つの原則」
成功企業の経営計画書を読み解くと、必ず次の5つが見えてきます。
(1) 明確な基本方針
- 「我が社は〇〇で社会に貢献する」という一文で表せる。
- 哲学的ではなく、実務に結びつく内容である。
(2) 少数重点主義
- 年間テーマは1〜3項目に絞られている。
- 「何でもやる」ではなく「これだけはやる」に集中。
(3) 数字と行動の両立
- 売上・利益といった数値目標だけでなく、具体的な行動指針も記載。
- 例:「売上10%増」+「週1回の顧客訪問を必ず実施」。
(4) 表現が平易である
- 専門用語や抽象的なスローガンは少なく、社員が一読して理解できる言葉で書かれている。
- 社長自身の言葉で書かれているため、熱が伝わる。
(5) チェック機能を持っている
- 月次・四半期ごとに振り返りの仕組みがある。
- 「作って終わり」ではなく「実行と修正」が前提になっている。
3. 成功企業に見られる「表現の力」
経営計画書の良し悪しを決めるのは、中身だけではありません。
**「どう表現するか」**も大切です。
多くの社長は話すときに「どもりがち」「言葉が続かない」ことが多いです。
しかし、計画書を作る過程で言葉を磨き、表現力を鍛えることができます。
その結果、
- 社員への説明が上手くなる
- 顧客への提案力が増す
- 銀行への交渉がスムーズになる
つまり、計画書を作ることは「表現力のトレーニング」でもあるのです。
4. 成功した経営計画書の実例(架空事例)
ここで、実際の成功事例をモデル化して紹介します。
事例A:食品加工業の会社
- 基本方針:「私たちは安心・安全な食品を通じて、地域の健康に貢献します」
- 年間テーマ:
1. 工場内の衛生管理徹底
2. 新商品の試作と市場投入 - 数字目標:売上前年比+8%、新規取引先10社開拓
- 実行計画:毎朝の衛生チェックシート導入、新商品開発プロジェクトチームを結成
結果:衛生管理の徹底により品質クレームがゼロになり、新商品がヒットして売上は計画を上回る12%増。社員のモチベーションも高まった。
事例B:建設会社
- 基本方針:「誠実施工で地域の信頼を築く」
- 年間テーマ:
1. 工事現場の安全管理 - 数字目標:労災ゼロ、売上前年比+5%
- 実行計画:安全パトロールを月2回実施、現場朝礼で安全唱和
結果:労災ゼロを達成し、自治体からの評価が向上。新規案件受注が増え、売上も計画通りに達成。
このように、テーマを絞り、実行に落とし込むことが成功の鍵です。
5. 成功する経営計画書を作るためのステップ
ここまでの内容を踏まえ、成功する経営計画書の作り方をステップ化すると以下の通りです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 基本方針を定める | 会社の存在意義を一文で書く | 社長の言葉で、抽象化しすぎない |
| ② 年間テーマを絞る | 1〜3項目に絞り込む | 「これだけはやる」と決める |
| ③ 数字と行動をセットで書く | 売上・利益+行動目標 | 行動は社員が実践可能なレベルに |
| ④ 表現を磨く | 平易で熱のある言葉にする | 社員に伝わるかを基準に推敲 |
| ⑤ チェック仕組みを組み込む | 月次レビュー・発表会 | 計画は「修正するもの」と心得る |
6. 計画書は「生きている道具」
経営計画書を「提出用の書類」と考えると、どれだけ書いても意味がありません。
大切なのは、**「経営計画書は生きている道具」**という認識です。
- 作ったら社員に発表し、共有する
- 定期的に振り返り、修正する
- 行動と成果を通じて進化させる
このプロセスを繰り返すことで、会社も社員も成長していきます。
まとめ:経営計画書は「会社の未来を描く設計図」
成功する経営計画書には共通の原則があります。
- 基本方針は普遍的に
- 年間テーマは少数重点で
- 数字と行動を両立させ
- 平易な表現で伝え
- 定期チェックを組み込む
これらを実践することで、経営計画書は単なる紙の束ではなく、会社の未来を描く設計図となります。
社長自身の覚悟と社員の力を一つにまとめる最強のツール——それが経営計画書なのです。
おわりに
経営計画書は、単なる書類でも、銀行に見せるための体裁でもありません。
それは、**会社の未来をつくるための「道具」**であり、**社員の心を動かす「魔法」**でもあります。
この記事で紹介したように、経営計画書を成功に導くポイントはとてもシンプルです。
- 立派さより「実行できること」に集中する
- 経営理念は無理につくらず、行動からにじみ出させる
- プロジェクト計画書で具体的な実行力を鍛える
- 手紙という形で社長の想いを直接届ける
- 変わらない原理と変わる戦術を区別する
どれも「当たり前」に見えるかもしれません。
しかし、この当たり前を本気で実行している企業は驚くほど少ないのです。
経営計画書の真価は、その分厚さや文章の美しさではありません。
「本当に実行されたかどうか」、そこにすべてがかかっています。
経営者であるあなたが、計画書を「実行の道具」として使いこなせば、社員は変わり、組織は変わり、数字も必ず変わります。
最後に、あなたに問いかけます。
「あなたの経営計画書は、社員の心を動かし、実行に結びついているでしょうか?」
もし答えに迷うなら、今こそ計画書のあり方を見直すときです。
立派な会社をつくるために、立派すぎない「生きた計画書」をつくっていきましょう。

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