銀行が見ているのは経常利益ではない?経常収支と利益剰余金の本質

目次
はじめに
経営者にとって「数字を読む力」は、生き残りをかけた最大の武器です。
しかし、多くの中小企業経営者は「売上」や「利益」にばかり目が行き、本当に見るべき数字を見落としがちです。
その一つが「利益剰余金(りえきじょうよきん)」です。
利益剰余金は、会社が設立してから積み上げてきた累積利益のことを指します。
「内部留保」と呼ばれることもあり、銀行や取引先が会社の実力を測る際に必ず注目する項目です。
ところが実際には、この利益剰余金を把握していない経営者は少なくありません。
「自己資本比率は20%を目指そう」と話す一方で、
「自社の利益剰余金は?」と聞かれると答えられない社長が多いのです。
これは非常に危険な状態です。
なぜなら、利益剰余金こそが「赤字に耐える力」「銀行からの信用」「成長投資の原資」という、会社の生命線そのものだからです。
本記事では、
- 利益剰余金の基本知識
- 企業にとって生命線となる理由
- 債務超過の本当の怖さとその回避法
- 自己資本比率より利益剰余金額を重視すべき理由
- 銀行が実際に注目している「経常収支」の考え方
これらを体系的に解説します。
「利益剰余金を理解し、活用できる経営者」と「そうでない経営者」では、5年後・10年後の会社の姿がまるで違ってきます。
この記事を読み進めることで、数字を経営判断に活かし、会社を強くするための具体的な視点を得られるでしょう。
利益剰余金とは何か?経営者が絶対に押さえるべき基本知識
経営者の皆さんにとって「利益剰余金(りえきじょうよきん)」という言葉は、聞いたことがあっても実際にどういう意味か説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
「内部留保」と呼ばれることもあるこの利益剰余金は、会社の財務の健全性を示す最重要指標のひとつです。にもかかわらず、多くの中小企業経営者は「売上」や「経常利益」ばかりに注目し、利益剰余金を軽視してしまっています。
本記事では、利益剰余金の定義から成り立ち、なぜ経営において決定的に重要なのかまでを徹底解説していきます。
1. 利益剰余金の定義とは?
まず基本から整理しましょう。
利益剰余金とは、会社が創業してからこれまでに稼いだ利益の累積額(税引後) のことを指します。
もっとわかりやすく言えば、会社が「どれだけ儲けを積み重ねてきたか」を数字で表したものです。
損益計算書(PL)の一番下に「当期純利益」として表示される数字がありますよね。これは、その年度の最終的な利益を示します。
この当期純利益が毎年積み上がっていき、貸借対照表(BS)の右下「純資産」の部に「利益剰余金」として表示されます。
つまり、
- PLは「1年間の成績表」
- BSの利益剰余金は「創業以来の成績表」
と言えるのです。
2. 利益剰余金と現金は一致しない
ここで注意が必要です。
「利益剰余金が1,000万円あるなら、会社に1,000万円の現金があるんでしょ?」と考える方がいますが、これは大きな誤解です。
利益剰余金は利益の蓄積を示しているだけで、その利益をどう使ったかまでは表していません。
例えば、過去に稼いだ利益で以下のような投資をしているケースが考えられます。
- 設備投資(機械を購入した)
- オフィスの改装
- 人材採用や教育への投資
この場合、現金は減っていますが、投資した資産の形で残っているのです。
ですから、利益剰余金は「お金そのもの」ではなく、「これまで会社が積み重ねてきた成果の証」と理解すべきです。
3. 利益剰余金と自己資本の関係
利益剰余金は「自己資本」の一部を構成します。
自己資本=資本金+利益剰余金+その他の項目
資本金は創業時に出資したお金ですが、それは最初に投じたお金に過ぎません。
一方、利益剰余金は会社の経営活動の結果として積み重なったものです。したがって、自己資本の中でも利益剰余金がどれだけ厚いかが、その会社の真の実力を示すと言ってよいでしょう。
4. 利益剰余金が少ない会社のリスク
利益剰余金が少ない、あるいはマイナスの会社はどうなるでしょうか?
- 一度の赤字決算で一気に債務超過に転落するリスクがある
- 金融機関や取引先からの信用を失う
- 設備投資や人材採用に積極的になれない
たとえば、ある会社の利益剰余金が500万円しかないとしましょう。もしその年に400万円の赤字を出したら、残るのは100万円です。翌年も少しでも赤字を出せば、すぐにマイナスに転落してしまいます。
つまり、利益剰余金が少ないということは、会社の体力が極端に弱いことを意味するのです。
5. 利益剰余金を経営にどう活かすか?
経営者が利益剰余金を活かすには、まず「自社の利益剰余金を正確に把握する」ことが必須です。
多くの社長は「売上」や「自己資本比率」は意識しますが、「利益剰余金の金額」を即答できないことが少なくありません。
利益剰余金を常に頭に入れておけば、こんな場面で役立ちます。
- 銀行との交渉で「うちは累積利益が〇〇万円あります」と示すことで信頼を得られる
- 「今年は売上が減りそうだが、利益剰余金があるから多少の赤字には耐えられる」と経営判断できる
- 将来の設備投資の資金計画を立てやすくなる
要するに、利益剰余金は経営者にとって「会社の貯金通帳」のような存在なのです。
まとめ表:利益剰余金のポイント
| 観点 | 説明 |
|---|---|
| 定義 | 創業以来の税引後利益の累積 |
| 表示場所 | 貸借対照表の純資産の部 |
| 現金との違い | 利益剰余金=お金の残高ではなく、投資に使われている場合もある |
| 意義 | 会社の体力・信用力を示す |
| 活用法 | 銀行交渉・赤字耐性・投資計画に活かせる |
利益剰余金が企業の「生命線」となる理由
「利益剰余金が大切だ」と言われても、実感が湧きにくい経営者は少なくありません。
なぜなら、普段は「売上を伸ばす」「経費を削減する」といった日々のオペレーションに意識が向きがちだからです。
しかし、長期的な視点で見ると、利益剰余金こそが企業の生死を分ける「生命線」 になります。
ここでは、その理由を3つの観点から掘り下げていきましょう。
1. 利益剰余金は「赤字に耐えるバッファー」
経営において、どんなに優れた会社でも「必ず赤字を出す局面」が訪れます。
リーマンショック、コロナ禍、業界構造の変化、大口取引先の倒産…。
予想もしない事態で、一時的に赤字に転落するのは避けられません。
このとき、企業を救うのが利益剰余金です。
たとえば、
- 年商10億円の会社
- 利益剰余金が2億円
この会社が年間で5,000万円の赤字を出しても、累積利益は1億5,000万円残ります。信用力も失われず、再起のチャンスを確保できます。
一方、利益剰余金が2,000万円しかない会社はどうでしょうか。
同じ5,000万円の赤字を出した瞬間に利益剰余金はマイナス、つまり「債務超過」に陥ってしまいます。
結論:利益剰余金は、企業がショックに耐えられるクッションであり、これがなければ一度の赤字で致命傷になりかねないのです。
2. 利益剰余金は「銀行からの信用スコア」
金融機関が融資審査を行う際、最も注目するのは「返済能力」です。
このとき、単年度のPL(損益計算書)の黒字赤字よりも、BSの利益剰余金を重視します。
理由はシンプルです。
- 経常利益は1年限りの成績 → 多少の操作や偶然で変動しやすい
- 利益剰余金は累積の成果 → 粉飾が難しく、会社の実力を映す
銀行員はこう考えています。
「この会社は、過去に利益を積み上げる経営をしてきたか?」
「赤字が出ても、累積利益で耐えられるか?」
その答えが、利益剰余金の金額に現れます。
さらに、利益剰余金が大きければ銀行は積極的に融資を提案してきます。なぜなら、「この会社は利益を生み続ける力がある」と見なされるからです。
3. 利益剰余金は「再投資のエンジン」
利益剰余金は、ただの貯金ではありません。
未来への投資に活用できる「企業成長の燃料」でもあります。
- 新しい設備投資
- DX(デジタル化)推進
- 優秀な人材の採用や育成
- 新規事業へのチャレンジ
これらの投資はすべて、過去の利益を原資として行われます。
もし利益剰余金が不足していれば、借入金に依存するしかなくなり、資金繰りが逼迫します。
逆に、利益剰余金が十分にあれば、**「余裕資金を確保しつつ大胆な投資を行える」**という健全な経営サイクルを回せます。
つまり、利益剰余金は会社の挑戦を可能にするエンジンなのです。
4. 利益剰余金が少ないと「経営の選択肢」が狭まる
利益剰余金の厚みは、経営の自由度そのものを左右します。
現金100万円しかない経営者と、1億円の利益剰余金を持つ経営者。
「新しい広告を試す」「優秀な人材を採用する」「将来を見据えた設備を導入する」
どちらが自由に意思決定できるかは明らかです。
利益剰余金がなければ、常に「守り」の経営しかできず、競合に差をつけられます。
逆に、十分な利益剰余金を持っていれば、経営者は攻めの判断を取りやすくなるのです。
5. 「利益剰余金=企業の体力」という発想を持とう
スポーツ選手に例えれば、利益剰余金は「持久力」や「スタミナ」に相当します。
- 一瞬のスピード(=単年度の利益)では勝てても、スタミナ切れすれば試合には勝てない
- 長期的に戦い抜くには、体力(=累積利益)が欠かせない
企業も同じです。
短期的な黒字だけでは生き残れません。利益剰余金を厚くし、財務体質を強化してこそ、未来の不測の事態に備えられるのです。
まとめ表:利益剰余金が生命線となる理由
| 観点 | 利益剰余金が果たす役割 |
|---|---|
| 赤字耐性 | 一時的な損失に耐えるバッファー |
| 信用力 | 銀行や取引先からの信頼を獲得 |
| 投資力 | 成長に必要な再投資の原資 |
| 経営自由度 | 利益剰余金の厚みが意思決定の幅を広げる |
| 経営体力 | 長期的な存続力を示す指標 |
債務超過の本当の怖さと回避の方法
経営者にとって「債務超過(さいむちょうか)」という言葉ほど恐ろしいものはありません。
しかし、多くの社長は「債務超過になったら即倒産」と誤解したり、逆に「まだ資金繰りが続いているから大丈夫」と楽観視してしまいがちです。
実際のところ、債務超過の怖さは「資金繰り」や「経営判断」だけでなく、信用力の失墜によるドミノ倒しにあります。
ここでは、債務超過の実態とその回避策を徹底解説します。
1. 債務超過とは何か?
まず定義から確認しましょう。
債務超過とは、会社の資産よりも負債が多い状態を指します。
貸借対照表で見ると、
- 左側(資産)より右側(負債+純資産)のうち「負債」が上回っている
- 純資産(資本金+利益剰余金)がマイナスになっている
という状態です。
たとえば、
- 資産:1億円
- 負債:1億2,000万円
この場合、純資産はマイナス2,000万円。これが典型的な債務超過です。
2. 債務超過は「即倒産」ではない
ここで重要なのは、債務超過になった瞬間に会社が潰れるわけではないという点です。
実際、資金繰りに余裕があれば債務超過でも会社は存続できます。
たとえば、現金を数千万円持っていれば、当面の支払いは続けられるでしょう。
しかし問題は、債務超過が表に出たときに起こる「信用の崩壊」です。
3. 債務超過が招く「信用崩壊」の連鎖
債務超過が発覚すると、周囲はこう動きます。
- 銀行:「この会社に追加融資はできない」
- 仕入先:「掛け売りは危険だ。前払いを求めよう」
- 取引先:「納品しても支払いが不安。他の会社に切り替えよう」
こうして資金の流れが一気に悪化し、**「資金が減るスピードが加速する」**のです。
つまり、債務超過そのものではなく、信用喪失による資金繰りの急速悪化が倒産の引き金になります。
4. 債務超過の原因は「赤字」
多くの社長が勘違いするのは、
「借金が増えたから債務超過になった」
という思い込みです。
実際の原因は違います。
- 借金をしても、その分が資産(現金や設備)として残っていれば問題ない
- しかし赤字を出すと、資産が減り、その結果として負債が資産を上回ってしまう
つまり、債務超過の本当の原因は「赤字の累積」なのです。
5. 「1期赤字でも大丈夫」という誤解
よく「2期連続赤字でなければ大丈夫」と言われますが、これは大きな誤解です。
本当に大事なのは「利益剰余金の厚み」と「赤字額の大きさ」です。
- 利益剰余金が1億円ある会社 → 1期で1,000万円赤字になっても余裕で耐えられる
- 利益剰余金が500万円しかない会社 → 1期で600万円赤字になれば即債務超過
つまり、「何期連続か」ではなく、**「どれだけ利益剰余金を積んでいるか」**がポイントなのです。
6. 債務超過を回避するための実践策
では、債務超過を避けるにはどうすればよいのでしょうか?
(1) 利益剰余金を厚くする
赤字に耐えるためには、まず利益剰余金を積み上げるしかありません。
目安としては、年商の20%程度の利益剰余金を確保しておくと安心です。
(2) 節税に偏らない
「節税=良いこと」と思い込む経営者は多いですが、過度な節税は利益剰余金を積み上げる機会を奪います。
利益が出たらある程度は法人税を払い、内部留保を増やすことが長期的に会社を守ります。
(3) 借入金の使い道を明確にする
借金をしても、それが資産や成長投資に変わるなら問題ありません。
しかし、赤字補填のための借金が続くと、資産が減っていくため債務超過に直結します。
(4) 経営改善を早期に行う
赤字が出始めたら「まだ大丈夫」と放置せず、すぐにコスト削減や新しい売上施策に取り組むことが重要です。
7. 債務超過を恐れるあまりの「逆効果」
注意点として、債務超過を避けようとするあまり「守りに入りすぎる経営」も危険です。
例えば、
- 借入を極端に減らす → 手元資金が減り、投資機会を失う
- 設備投資を避ける → 成長の芽を摘んでしまう
結果として利益を生み出せず、むしろ債務超過のリスクを高めることになります。
つまり、**「利益剰余金を積みながら攻めの投資を行う」**バランスが求められるのです。
まとめ表:債務超過の怖さと回避策
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 債務超過の定義 | 資産より負債が多い状態 |
| 即倒産か? | いいえ、信用失墜による資金悪化が本当の危険 |
| 原因 | 借金ではなく、累積赤字 |
| 誤解 | 「2期連続赤字でなければ大丈夫」は間違い |
| 回避策 | 利益剰余金の積み上げ、過度な節税回避、借金の適切な使い方、早期改善 |
| 注意点 | 守りに入りすぎると逆効果 |
自己資本比率より「利益剰余金額」を重視すべき理由
多くの経営者が財務指標として真っ先に意識するのが「自己資本比率」です。
確かに、この数値は会社の安定性を示すものとしてよく使われます。しかし、中小企業においては自己資本比率よりも「利益剰余金の絶対額」を重視すべきです。
なぜなら、自己資本比率はあくまで「割合」にすぎず、経営の実態を見誤らせる危険があるからです。
1. 自己資本比率とは何か?
まず定義を整理しましょう。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
ここでいう自己資本は「資本金+利益剰余金」などで構成されます。
つまり、総資産のうちどれだけが「返さなくていいお金(自己資本)」で占められているかを示す指標です。
一般に「自己資本比率30%以上で優良企業」と言われることもあります。
2. 自己資本比率の「落とし穴」
自己資本比率は確かに便利な指標ですが、数字に一喜一憂するのは危険です。
たとえば、次の2社を比較してみましょう。
| 会社 | 総資産 | 自己資本 | 自己資本比率 | 利益剰余金 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 1億円 | 3,000万円 | 30% | 2,000万円 |
| B社 | 5,000万円 | 2,000万円 | 40% | 500万円 |
パッと見では自己資本比率の高いB社の方が健全に見えます。
しかし、実際には利益剰余金がわずか500万円しかなく、1期の赤字で吹き飛ぶ可能性があります。
一方A社は比率こそ30%ですが、利益剰余金2,000万円があるため、ある程度の赤字にも耐えられます。
結論:中小企業にとっては「比率」よりも「額」が重要なのです。
3. 自己資本比率を高めようとすると起こる逆効果
多くの経営者は「自己資本比率を高めなければ」と考え、次のような行動を取ります。
- 借入金を極力減らす
- 設備投資を控える
- 手元資金を使い切る
一見すると堅実に見えますが、これは大きな誤りです。
なぜなら、借金を減らせば同時に資産(現金や設備)も減るからです。
結果として「自己資本比率は上がったが、利益を生む力は弱まった」という逆効果を招きます。
つまり、自己資本比率だけを目標にすると、投資機会を失い、利益剰余金を積み上げられなくなるのです。
4. 利益剰余金額が示す「真の体力」
利益剰余金は、会社が設立以来どれだけ稼ぎを蓄積してきたかを示します。
これは「経営の持久力」とも言えるもので、数字の大小がそのまま企業体力につながります。
たとえば、
- 売上10億円、利益剰余金2億円 → 年間2,000万円の赤字に10年耐えられる
- 売上10億円、利益剰余金1,000万円 → たった1期の赤字で債務超過のリスク
このように、利益剰余金の絶対額は「どれだけ赤字に耐えられるか」という実力を示すのです。
5. 銀行が重視するのも「額」
実際、銀行とのやり取りにおいても「利益剰余金額」を覚えておくことが重要です。
銀行員にこう説明できる経営者は、間違いなく信用を得やすくなります。
- 「うちの利益剰余金は1億円あります。だから仮に一時的に赤字が出ても大丈夫です」
- 「利益剰余金が年商の20%に到達したので、次の投資に踏み切ります」
このような発言ができる経営者は、財務の本質を理解している人として評価されます。
6. 「額」で考える財務戦略
中小企業が持つべき発想は、常に「比率」ではなく「額」で考えることです。
- 自己資本比率 → あくまで参考値
- 利益剰余金額 → 経営の生命線
目安としては、年商の20%を利益剰余金として積み上げることを第一目標にしましょう。
まとめ表:自己資本比率より利益剰余金額を重視すべき理由
| 比較項目 | 自己資本比率 | 利益剰余金額 |
|---|---|---|
| 性質 | 割合 | 累積の実額 |
| 強み | 簡単に比較できる | 赤字耐性・体力を正確に示す |
| 弱み | 数字のトリックで良く見える | 小さいと即リスク顕在化 |
| 経営判断 | 借入を減らす方向に偏る | 成長投資と安定性の両立が可能 |
| 銀行評価 | 参考程度 | 最重要視される |
銀行が見ているのは「利益」ではなく「経常収支」
多くの経営者は「銀行は経常利益を見ている」と思い込んでいます。
確かに決算書には経常利益が大きく表示され、ニュースでも「黒字・赤字」で企業が語られることが多いでしょう。
しかし実際の銀行は、経常利益そのものよりも「経常収支(キャッシュベースでの実力)」を重視しています。
なぜなら、銀行が融資をするうえで最大の関心事は「この会社は借りたお金を返せるか?」だからです。
1. 経常利益の弱点
経常利益とは、営業利益に営業外収益・費用を加減したものです。
つまり「本業+財務活動」の利益を示す指標です。
ただし経常利益には弱点があります。
- 現金の動きと一致しない
→ 減価償却など「お金が出ていかない経費」も含まれる - 操作が可能
→ 売上の前倒し計上や在庫水増しで黒字に見せられる
つまり、経常利益は「帳簿上の数字」にすぎず、返済能力を示すには不十分なのです。
2. 経常収支とは何か?
そこで銀行が重視するのが「経常収支」です。
簡単にいえば、
経常収支 = 経常利益 + 減価償却費 − 運転資金の増加額
この計算式により、帳簿トリックを排除し、実際にお金がどれだけ増えたかを把握できます。
ポイント解説
- 減価償却費を足す理由
減価償却は「お金が出ていかない経費」なので、キャッシュは減っていない。その分を利益に戻す。 - 運転資金の増加を引く理由
売掛金や在庫が増えると、その分キャッシュが寝てしまう。帳簿上は利益でも、現金は減っているため調整する。
3. 銀行は経常利益を疑っている?
銀行員は「中小企業の決算書は粉飾されている可能性が高い」と考えています。
売掛金や在庫の増加は、粉飾の典型的な手口だからです。
そのため、銀行は決算書をそのまま信用せず、必ず経常収支を算出して「現金ベースの稼ぐ力」を確認します。
経常利益が黒字でも、経常収支がマイナスであれば、
「この会社はお金を稼げていない」
と判断されるのです。
4. 経営者が知るべき「銀行とのギャップ」
多くの経営者は「経常利益が黒字だから安心」と考えます。
しかし銀行の評価は違います。
- 経常利益:黒字
- 経常収支:マイナス
こうした場合、銀行は「資金繰りが危ない」と見て新規融資を渋ります。
このギャップを理解していないと、
「黒字なのに銀行が貸してくれない!」
という不満につながるのです。
5. 経常収支を改善するには?
経常収支を改善するには、次の3つがカギです。
(1) 売掛金の回収を早める
売掛金が増えると運転資金を圧迫します。回収サイトを短縮する交渉を心がけましょう。
(2) 在庫を適正化する
過剰在庫はキャッシュを眠らせるだけです。定期的に棚卸しを行い、売れ残りや不良在庫を抱えない仕組みをつくることが重要です。
(3) 減価償却を意識した投資
減価償却費は経常収支の改善要素です。投資は慎重に行いながらも、適切な減価償却が会社のキャッシュフローを安定させます。
6. 銀行から「見えないサイン」
銀行員は直接「経常収支が悪化しています」とは言いません。
代わりに、こんなサインを出すことがあります。
- 訪問頻度が減る
- 新規融資の話が出なくなる
- 借換えや返済条件変更の提案が増える
こうしたサインは「経常収支がマイナスだと見ていますよ」という無言のメッセージです。
経営者はこれを敏感に察知し、自社で経常収支を計算・改善していく必要があります。
まとめ表:銀行が見ているのは経常収支
| 指標 | 経常利益 | 経常収支 |
|---|---|---|
| 性質 | 帳簿上の利益 | 現金ベースの儲け |
| 操作可能性 | 高い(粉飾しやすい) | 低い(キャッシュで把握) |
| 銀行評価 | 参考程度 | 最重視される |
| 改善策 | 売上拡大・経費削減 | 売掛回収・在庫管理・資金繰り改善 |
おわりに
経営者の最大の使命は、会社を「続ける」ことです。
そのためには、売上や利益の増減に一喜一憂するのではなく、会社の土台を強くする数字に目を向ける必要があります。
その土台こそが「利益剰余金」です。
利益剰余金は、過去の経営の成果を示すと同時に、未来への挑戦を支える力でもあります。
十分な利益剰余金があれば、想定外の赤字に耐えられ、銀行からの信用も得られ、必要な投資にも踏み切れます。
逆に利益剰余金が乏しければ、一度の赤字で経営が揺らぎ、債務超過という致命的なリスクに直面してしまいます。
今回の記事で見てきたように、
- 自己資本比率より「利益剰余金額」を重視すること
- 銀行が見ているのは「帳簿上の利益」ではなく「経常収支」であること
- 利益剰余金は経営者が常に暗記しておくべき数字であること
これらを理解するだけで、財務戦略の質は大きく変わります。
経営は「売上を伸ばす」ことだけが目的ではありません。
どんな荒波が来ても沈まない船をつくり、そのうえで航海の自由度を広げていくことが本質です。
利益剰余金を積み上げることは、そのための最も確実で、最も地道な道です。
ぜひ、自社の数字をもう一度見直し、利益剰余金を「経営の羅針盤」として活用してください。

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