【徹底解説】月商3ヶ月分の預金が理想?企業の資金管理に必要な考え方とは

目次

はじめに|なぜ銀行は「月商の何ヶ月分の預金があるか」を気にするのか?

企業経営において「預金残高をどのくらい確保すべきか?」という問題は、経営者なら誰しも一度は考えたことがあるでしょう。

特に、銀行との融資交渉や財務分析の場面で、銀行員から 「預金残高は月商の何ヶ月分ですか?」 と聞かれたことがある方も多いのではないでしょうか。

では、なぜ銀行は企業の預金残高と月商を比較するのでしょうか?
結論から言えば、銀行は企業の「倒産リスク」を判断するために、預金残高と月商の関係を重視している からです。

  • 預金残高が月商の1ヶ月分以下 → 自転車操業状態で危険
  • 月商2ヶ月分の預金がある → ギリギリだが安定している
  • 月商3ヶ月分以上の預金がある → 企業の安全性が高く、銀行の評価も良くなる

また、コロナ禍のように 「突然売上がゼロになるリスク」 もあるため、最近では 月商3〜5ヶ月分の預金を確保することが推奨 されています。

本記事では、
銀行が預金残高を月商と比較する理由
企業の安全性を測るための「理想的な預金残高」
資金ショートを防ぐための実践的な資金管理法
を分かりやすく解説します。

経営者として、資金繰りを安定させるための知識を身につけ、企業の財務基盤を強化していきましょう。

銀行が預金残高を月商で見る理由

経営者の皆さんは、銀行と融資の相談をするときに「預金残高は月商の何ヶ月分ですか?」と聞かれたことがあるかもしれません。なぜ銀行は、企業の預金残高を月商と比較するのでしょうか?

銀行は企業の「倒産確率」を見ている

銀行が最も気にしているのは、企業が「貸したお金をきちんと返せるかどうか」です。そのため、銀行は企業の決算書を見て「この会社は資金繰りに問題がないか?」を判断します。

財務指標には「収益性」や「成長性」などさまざまなものがありますが、銀行が最も重要視するのは「安全性」、つまり倒産しないかどうかです。

最も確実な返済能力の指標は「預金残高」

利益が出ていても、手元にお金がなければ支払いはできません。どんなに黒字でも、資金繰りが悪化すれば倒産してしまいます。銀行が一番信頼できるのは「利益」よりも「預金残高」なのです。

例えば、

  • 預金が1億円ある会社 → 1億円の借金があっても、即座に返済できる
  • 預金が1000万円しかない会社 → 1億円の借金を抱えていたら、すぐに資金ショート

このように、手元にある現金がどれだけあるかが、企業の安全性を示す重要な指標になります。

なぜ「月商」と比較するのか?

預金残高が多いほど安全ですが、「どのくらいあれば十分なのか?」を判断する基準が必要です。ここで出てくるのが「月商」です。

企業の支払額は、通常、売上高(=月商)とほぼ一致します。

  • 月商1000万円の会社は、毎月1000万円近くの支払いがある
  • 月商1億円の会社は、毎月1億円近くの支払いがある

したがって、預金残高が「月商の何ヶ月分」あるかを見ることで、企業の安全性を素早く判断できるのです。

企業の安全性を測る「預金残高の目安」

「会社の預金はどのくらい持っておけばいいのか?」
これは、経営者なら一度は考える疑問でしょう。銀行員が預金残高と月商を比較する理由を理解したところで、次は「どのくらいの預金残高が理想なのか」を具体的に見ていきます。

最低ラインは「月商1ヶ月分」

まず、企業が最低限持っておくべき預金残高は 月商1ヶ月分 です。

これを下回ると、資金繰りは非常に危険な状態になります。たとえば、売上が少し落ち込んだり、取引先からの入金が遅れたりするだけで、支払いができなくなるリスクがあります。この状態は俗に 「自転車操業」 と呼ばれます(詳細は次のセクションで解説)。

預金残高(月商比)安全性の目安
1ヶ月分以下自転車操業(危険)
1~2ヶ月分ギリギリ(要注意)
2~3ヶ月分安定している
3ヶ月分以上理想的

理想は「月商3ヶ月分」以上

銀行が「月商の3ヶ月分の預金残高が理想」とよく言うのは、企業が突発的なトラブルにも耐えられる安全水準だからです。

たとえば、新型コロナウイルスの影響で、飲食店や観光業では 売上が突然ゼロになった 会社が多くありました。このとき、すぐに銀行に融資を申し込んでも、実際にお金が振り込まれるまで 最短でも1〜2ヶ月、場合によっては3ヶ月以上 かかるケースもありました。

つまり、万が一、売上がゼロになったとしても、3ヶ月間は持ちこたえられるだけの預金を確保することが望ましい ということです。

業種によって必要な預金残高は変わる

ただし、どの業種でも一律に「3ヶ月分がベスト」というわけではありません。

  • 資金繰りが安定している業種(飲食、小売など)
     → 月商2〜3ヶ月分 が目安
  • 資金の動きが不規則な業種(建設、不動産など)
     → 販売管理費+銀行返済額の3ヶ月分 を目安にすると良い

不動産業や建設業のように、月ごとの売上や支払いが大きく変動する業種 では、「月商3ヶ月分」ではなく、「固定費の何ヶ月分か」を基準にする方が実態に即しています。

預金残高が少ないと、融資の交渉も不利になる

銀行は、融資の審査をするときに「この会社にお金を貸しても大丈夫か?」を判断します。

もし預金残高が 月商1ヶ月分以下 しかないと、
✅「この会社は資金繰りが厳しいのでは?」
✅「追加で融資をしても、すぐに資金ショートするのでは?」

と警戒され、融資が通りにくくなります。逆に、月商3ヶ月分以上の預金があると、融資の審査でもプラス評価 となります。

自転車操業とは?資金ショートのリスク

企業経営において 最も危険な状況の一つ「自転車操業」 です。これは単なる比喩ではなく、財務の世界では明確な基準があります。預金残高が月商の1ヶ月分以下 の状態が続くと、自転車操業とみなされることが多いのです。

では、自転車操業とは何なのか?そして、なぜこれが危険なのかを詳しく見ていきましょう。

自転車操業とは何か?

自転車をこぐのをやめると、倒れてしまいますよね?企業経営でも、資金繰りがギリギリの状態だと「お金の流れを止めた瞬間に倒産する」リスクがあります。これが 「自転車操業」 です。

自転車操業の特徴

手元資金がほとんどない(預金残高が月商の1ヶ月分以下)
入金がないと、支払いができない
資金繰りが常に不安定
売上の遅れや未回収が命取りになる

つまり、「入金があった瞬間に支払いをして、ギリギリ回している状態」です。この状況が続くと、少しでも想定外の出来事があると一気に資金ショートに陥ります。

資金ショートが起こる原因

資金ショートとは、「支払わなければならないお金があるのに、手元に現金がない」状態のことを指します。

資金ショートが発生する典型的なパターンを見てみましょう。

資金ショートの原因具体例
売上の遅延取引先の支払いが予定より遅れる
未回収の発生取引先が倒産し、売掛金が回収できない
急な支出の増加設備の故障、想定外の経費増
銀行融資の遅れ追加融資の審査に時間がかかる

こうした出来事が1つでも重なると、たちまち「支払えない」状態になり、企業は破綻に向かいます。

資金ショートを回避するために

では、どうすれば自転車操業や資金ショートのリスクを避けられるのでしょうか?

最低でも「月商の2ヶ月分」の預金残高を確保する
売掛金の回収期間を短縮する(可能なら前払い・即時払いの仕組みを作る)
固定費を見直し、無駄な支出を減らす
銀行融資は「資金ショートしてから」ではなく「余裕があるうちに」借りる

特に 「借入は資金がなくなってからでは遅い」 という点は非常に重要です。銀行は「資金繰りが厳しくなった会社」よりも、「安定している会社」に対して融資をしやすい傾向があります。

なぜ「月商の3ヶ月分」が理想と言われるのか

銀行や財務の専門家がよく言う「月商の3ヶ月分の預金残高を持つべき」というアドバイス。これは単なる経験則ではなく、合理的な根拠があります。

① 売上がゼロになっても3ヶ月は持ちこたえられる

経営の世界では「売上が突然ゼロになる」ことは珍しくありません。例えば、

  • 新型コロナウイルスの影響で飲食店が営業できなかった
  • 主要取引先の倒産で売掛金が回収できなかった
  • 災害やトラブルで業務が一時停止した

このような状況に陥ったとき、手元資金が「月商1ヶ月分」しかないと、すぐに資金ショートしてしまいます。しかし、3ヶ月分の預金があれば、その間に次の手を打つことができます

② 銀行融資が実行されるまでのタイムラグに対応できる

資金繰りが苦しくなったとき、銀行融資を申し込んでも、実際にお金が振り込まれるまでには 数週間から数ヶ月 かかります。

例えば、新型コロナのとき、多くの企業が日本政策金融公庫に融資を申し込みましたが、実際に資金を受け取るまでに3ヶ月以上かかったケースもありました

この期間を耐えるためには、やはり 月商3ヶ月分の預金が必要 になります。

③ 銀行の信用評価が向上し、融資を受けやすくなる

銀行は企業の信用力を評価する際に、預金残高 も重要な指標として見ています。

預金残高(月商比)銀行の評価
1ヶ月分以下資金繰りが不安定 → 融資が厳しくなる
1〜2ヶ月分普通 → 追加融資は慎重に審査
3ヶ月分以上安定している → 融資の審査が通りやすい

つまり、預金残高が多い企業ほど、資金調達がしやすくなる というメリットがあります。

④ 取引先からの信頼が高まる

資金繰りが厳しい会社は、取引先にも不安を与えます。特に、大手企業との取引では「支払い能力があるか」を厳しくチェックされます。

もし取引先が「この会社は預金残高が少なく、資金繰りが不安定では?」と判断した場合、
取引条件を厳しくされる(支払いサイトを短縮される、前払いを求められる)
新規取引を断られる

といったリスクが生じます。

逆に、預金残高が十分にある会社は、取引先からの信頼も厚くなり、有利な条件でビジネスができる のです。


結論:「月商3ヶ月分の預金」が企業の安定に不可欠

売上がゼロになっても3ヶ月は耐えられる
銀行融資が実行されるまでの時間をカバーできる
銀行の信用評価が上がり、融資を受けやすくなる
取引先からの信頼が高まり、ビジネスが安定する

これらの理由から、「月商3ヶ月分の預金残高」が理想的な水準 と言われるのです。

資金繰りを安定させるための実践的な方法

資金繰りを安定させ、「月商3ヶ月分の預金残高」を確保する ためには、具体的な対策が必要です。ここでは、すぐに実践できる5つの方法を紹介します。

① 売掛金の回収を早める(入金サイトの短縮)

売上が立っていても、入金が遅れれば資金繰りは悪化します。
請求書を早めに発行する(締め日を見直し、できるだけ早く送る)
入金サイトを短縮する交渉を行う(現金払い・前払いの導入)
分割回収を取り入れる(一括ではなく、契約時・納品時・完了時に分割回収)

特に、新規取引先とは できるだけ短い入金サイト を交渉することが重要です。


② 仕入れや支払いサイトを延ばす(支払いの延期)

売掛金の回収を早めるだけでなく、支払いを遅らせることも資金繰り改善につながります。
仕入れ先と支払いサイトの延長交渉をする(30日→60日など)
リースや割賦払いを活用し、大きな支払いを分散する
固定費の支払いスケジュールを調整する(家賃やリース料の支払日変更)

例えば、売掛金が30日後に入るのに、仕入れの支払いが15日後だと資金繰りが苦しくなります。このタイミングを調整するだけでも、預金残高の安定につながります。


③ 使わないお金を「定期借入」で確保しておく

資金繰りに困ってから銀行に融資を申し込むと、審査に時間がかかったり、最悪の場合、借りられないこともあります。そこで 資金に余裕があるときに、あえて借入をしておく ことが重要です。

おすすめの方法
月商3ヶ月分の預金がないなら、不足分を銀行から借りる
「手元資金の強化」を目的として、低金利で融資を申し込む
借入枠(コミットメントライン)を設定し、必要なときにすぐ借りられる状態にする

特に 金利が低い時期は、銀行から借りられるうちに借りておく という戦略が有効です。


④ 無駄な固定費を削減する(キャッシュフロー改善)

資金繰りが苦しくなる原因の一つが 無駄な固定費の発生 です。毎月の支出を見直し、削減できる部分がないかチェックしましょう。

オフィスや店舗の家賃を見直す(賃料交渉、縮小移転など)
不要なサブスクリプション契約を解約する
外注費を削減し、自社で対応できる部分を増やす
社員の残業時間を管理し、無駄な人件費を抑える

固定費の削減は、一度見直すだけで 継続的に資金繰りが改善 されるので、特に効果が大きい対策です。


⑤ 非常時の資金調達手段を確保しておく

万が一、資金ショートしそうになったときのために、事前に資金調達の選択肢を用意しておく ことも重要です。

資金調達の手段

調達方法メリットデメリット
銀行融資低金利で借りられる審査に時間がかかる
ビジネスローン即日借入が可能金利が高い
ファクタリング(売掛金の早期現金化)即日資金化できる手数料が高い
補助金・助成金返済不要申請が面倒

特に ファクタリングやビジネスローンは、緊急時の資金調達手段として検討 できますが、金利や手数料が高いため、あくまで最終手段と考えましょう。


まとめ:資金繰り安定のために、今すぐできること

売掛金の回収を早める(入金サイトの短縮)
仕入れや支払いサイトを延ばす(支払いの延期)
余裕があるうちに銀行から資金を確保しておく(定期借入)
無駄な固定費を削減し、キャッシュフローを改善する
非常時の資金調達手段を確保しておく

資金繰りが安定すると、銀行からの評価も上がり、経営の自由度が大きく向上 します。「お金がないから決断できない」という状況を防ぐためにも、今のうちから資金繰りの管理を徹底しましょう。

おわりに|「月商3ヶ月分の預金」で経営の安定を

企業経営において、資金繰りの安定は 「利益」以上に重要 です。
どれだけ売上や利益があっても、手元に現金がなければ会社は存続できません

本記事で解説したように、
銀行は「企業が倒産しないか」を判断するために、預金残高と月商を比較する
最低でも月商の1ヶ月分、理想は3ヶ月分以上の預金が必要
資金ショートを防ぐための実践的な資金管理法を導入する
ことが、経営の安定につながります。

特に、
売掛金の回収を早める
仕入れや支払いサイトを調整する
銀行融資を「必要になる前」に確保する
固定費を見直し、無駄な支出を削減する
非常時の資金調達手段を確保しておく
といった対策を行うことで、資金繰りの不安を減らし、より戦略的な経営判断ができる ようになります。

「お金がないから決断できない」経営ではなく、「資金に余裕があるから攻められる」経営へ。
ぜひ、今からできる資金管理の改善に取り組んでみてください。

当事務所では「補助金申請支援」や 「資金繰り改善」など
経営に関するサポートを幅広く行っております。

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